心の眼を周囲に向ける


 回生薬局代表で漢方家の平野智也が、
健康のこと、歴史のこと、文化のことなど、日々感じたことなどを連載しています。
Vol.8 心の眼を周囲に向ける

昨晩はクリスマスイブでした。

世界中でたくさんのプレゼントが子供達のもとに届いたことでしょう。
もらう子供が嬉しいのはもちろんですが、実はあげる大人も嬉しいんですよね。
ミルトン・エリクソンという有名な心理学者と、
ある大金持ちの老婦人との、こんな実話があります。

老婦人はある日、

「私はお金もあり、大邸宅に住んでいます。
けれども私ほど不幸な者はいません。
寂しくて寂しくてたまりません。どうすればいいでしょう?」

と、博士に相談します。
エリクソン博士は、老婦人にこうアドバイスしました。

「あなたが所属している教会のすべての人の誕生日に、自分が育てた花にカードを添えて、 誰にも見つからず、誰から来たかわからないようにプレゼントをするように。そうすれば、あなたがいちばん幸せな人になるでしょう」
老婦人は心が虚ろでたまらなかったので、さっそく毎日誰が誕生日か調べました。
そして、きれいな鉢植えを作り、誰にも見つからないように、 朝早くにこっそり届け続けました。

そのうち町では、“天使が誕生日にすみれの鉢をお祝いに持って来てくれる”、
という噂がたちはじめます。

そんな町のある家庭で、85歳になるおばあちゃんを囲み、老人ホームに入る前の最後の誕生日をお祝いしていました。

おばあちゃんがテーブルの上の綺麗なすみれの鉢植えに感動します。

家族が、「天使からのプレゼントだよ」と伝えると、おばあちゃんは、

「老人ホームに行くのはとても寂しかったけれど、自分のことを思ってくれる人が家族以外にいることを感じ、移っていく勇気が湧いてきた!」

と、とてもとてもよろこんだのです。

この家族が、
「あんなにおばあちゃんの気持ちを変えるような、すてきな贈り物をしてくれた人は誰だろう」
と調べ、それが大邸宅の老婦人だとわかりました。

そして、自分たちも同じことをしようと思い、町中で相談したのです。

その年のクリスマスの夜、老婦人からエリクソン博士に電話がかかってきました。

「先生、今日のクリスマスほど不思議なクリスマスはありませんでした。
私の庭のクリスマスツリーの下に、クリスマスプレゼントがたくさん置かれていました。

その贈り物には名前もなんにも書かれていませんでしたが、どれも私がほしいようなもばかりなんです。
いつも私がかぶっているような帽子だとか、 いつもしている手袋とピッタリ合うスカーフなどが並んでいました。

花の種や、新しい誕生日カードもたくさんありました。
でも、いったい誰から贈られたのかわかりません」

博士は
『あなたはまだ不幸ですか?』と聞きました。

老婦人は
「えっ、私が不幸だなんて…自分の人生の中で、こんなにうれしいクリスマスを迎えたことはありません。私ほど幸せな人間はいないでしょう」
と答えたそうです。

 

僕は、「いい生活」とは、かならずしも「いい人生」とイコールではないのだと思います。

ブランド品で着飾り、豪邸に住み、高級車に乗る生活というのは、
言うなれば、利己の世界、自分だけの欲の世界…
つまり「子供の世界」だと思うんです。

一方、「いい人生」とは、自分の時間や資源を他人を喜ばせるために使う生き方…
言ってみれば「大人の世界」だと思うんです。

ほんのささいなことでも、自分に何かできることはないかと考えて、
心の眼を周囲に向けてみることが大切なんですね。


人は、基本的に誰かを喜ばせることが好きな生き物だと思います。
他に喜びを与える生き方が、いちばん豊かな人生なのかもしれませんね。

クリスマスはそういうことを考える、よいきっかけになる日だと思うのです。

2012.12.25平野智也